物語の断片(writing作品より抜粋)」カテゴリーアーカイブ

パンドラの素粒子#5

森と森の間で 回転扉が回りだす
動物たちが 駆けていく
エルフたちが 駆けていく

海と海の間で 回転扉が回りだす
魚たちが 泳いでいく
人魚たちが 泳いでいく

空と空の間で 回転扉が回りだす
雲と星々が 流れていく
透明な虹色と静寂の歌声が 流れていく

僕ときみの間で 回転扉が回りだす
きみが 光を放つ
僕が 闇に包まれる

回転扉は 天使のまばたき
時々 小さな羽根を 贈ってよこす

回転扉が 消えるのは
生きることを 選んだとき
そのまなざしが 真の世界への 扉を開ける

 

「世界の果ては象の耳」#019

 

 

パンドラの素粒子#プロローグ

閉じこもってしまう全ての人が 弱いってわけじゃない
乱暴なこの社会に慣れてしまうよりも 守りたいものがあるんだ
一人でいる全ての人が 逃げ出したってわけじゃない
この社会の儚い価値観に合わせるよりも やるべき事があるんだ

僕らは 変わり者に見えるかもしれない
でも いつの時代にも僕らはいて 繋いできたんだ
これまで 教えられてきた世界が消え去り
真の世界がその姿を現す日に みんなが戸惑わないように

この社会に反抗しない全ての人が 諦めているってわけじゃない
自分の力を知るがゆえに 本当に必要なことしかできないんだ
この社会に反抗する全ての人が 自己愛に溺れているってわけじゃない
こうして生まれてきたがゆえに 放っておけないんだ

僕らは 理解しがたく思えるかもしれない
でも いつの時代にも僕らはいて 示してきたんだ
新しい太陽が昇る日に
反転する地平線を みんなが迷わず歩いていけるように

だから この社会の秩序の中に 親切顔で入れようとしなくていい
それは 力を奪い 狂気を生み出すものだから
僕らは 存在の秩序の中で生きている

僕らは パンドラの素粒子
世界をふるわせ 誰の中でもふるえている

 

 

 

「青と黄金と虹:#6」

黄金の瞳
インディゴの衣をまとった 老人が訊ねた
「永遠の色は 何色か?」

私は答えた
「虹色よ」

老人が訊ねた
「それは どこにある?」

私は答えた
「ここに あるわ」

老人は 目を閉じた

黄金の瞳
インディゴの衣をまとった 私が訊ねた
「永遠の色は 何色かしら?」

子供は答えた
「世界の色」

私が訊ねた
「それは どこにあるの?」

子供は答えた
「ここに あるよ」

私は 目を閉じた

黄金の瞳
インディゴの衣をまとった 子供が訊ねた
「永遠の色は 何色なの?」

それは答えた
「私の色だ」

子供が訊ねた
「あなたは どこにいるの?」

それは答えた
「ここに いる」

子供は 目を閉じた

黄金の瞳
インディゴの衣をまとった 君

 

― writing: 「青と黄金と虹」より抜粋

 

 

「青と黄金と虹:#4」

あなたが 黄金の矢を 放つ
私は 瑠璃色の血を 流す

虹色の叫びは 世界を壊し
虹色の沈黙は 世界を創る

私が 黄金の矢を 放つ
瑠璃色の宙が 引き裂かれる

虹色の涙が 世界を癒す

始めから 終わっていたの?
終わりは 始まっていないの?

何も始まっていない
何も終わっていない

黄金の花
瑠璃色の蜜

虹色の蝶が 舞う

 

― writing: 「青と黄金と虹」より抜粋