voice」カテゴリーアーカイブ

私の歩む地球

ドクン ドクン ドクン ドクン
輝く透明な虹色 私がこれから歩んでいく地球
ドクン ドクン ドクン ドクン
鮮やかで軽やかな風が吹く
誰もが創造者として立ち上がり
同時に存在するエネルギーを選択しながら歩いて行く
それぞれのペースが尊重され その美しい調べが世界を彩る
多様な世界は共に育むものとなり
行き交う力は豊かな森を広げ すべての人に必要な実が分けられる
抜けるような青い空
輝く水面 創造と破壊を伝える波の音
深海は現出する前の満ちたる大いなる静寂を秘め
クジラの飛沫が時を告げる
星々はここにあり
血を沸き立たせる太陽は 新たな体験の場を提供する
木々のざわめきはうたとなり
全ての生命の螺旋を描く輪の中心に湧き出す泉は雨を呼び 開かれた物語を紡ぐ
みずみずしい金緑の草原を この地に生まれた喜びに子供たちが走っていく
働くことは個々の真の目的を生きることとなり
勝敗は相手を負かすことではなく
称賛は生を全うした死の時に与えられる
連なる山々の教え 宇宙の鼓動と呼応するマントル
月の満ち欠けは静と動のリズムを伝え
暗闇に灯すあたたかな明かりは血を沈め 夜の扉をノックする
豊かな眠りは豊かな生活を創り出し 豊かな呼吸は世界と共鳴し
怒りは満ち足りた心に溶かされ 孤独はひとつの中に抱きしめられる
見えるものと見えないものへの比重が変わり
純粋な意図が人々を繋げる手段となる
存在はここにあり
肉体の目は内なる目によって開かれ 世界の中にありながら世界自身を体感する
ドクン ドクン ドクン ドクン
新しい地球はすでにここにあり
伸ばした手があなたに触れる
ドクン ドクン ドクン ドクン
私たちが歩みはじめた地球
今初々しく目の前に広がり
見上げた空から 輝く透明な虹色の雨が降る

 

 

テーブルの上

真っ白い廊下を 赤いワンピースを着た裸足の少女が 走って行く
片側に 幾つもの扉が並んでいる

少女は 扉を開けた
部屋の中には 大きなテーブルがあった
望遠鏡 顕微鏡 計量器 定規 薬品 試験管やいろいろな実験用具
そして 化学式と数式が書かれたメモが ぐちゃぐちゃに丸められていた
静まりかえった部屋に 主の姿はなかった
少女は 部屋を出て 真っ白な廊下を走っていった

少女は 扉を開けた
部屋の中には 大きなテーブルがあった
地球儀 世界地図 化石 骨格標本 積み上げられたたくさんの分厚い本
そして 一枚の年表が びりびりに破かれていた
静まりかえった部屋に 主の姿はなかった
少女は 部屋を出て 真っ白な廊下を走っていった

少女は 扉を開けた
部屋の中には 小さなテーブルがあった
ランプ インク ペン
そして 一編の詩が書かれた小さな紙片が 置かれていた
静まりかえった部屋に 主の姿はなかった
少女は プレゼントを受け取るように その紙を手にすると
大事そうに ポケットにしまった
少女は 部屋を出て 真っ白な廊下を走っていった

少女は 扉を開けた
部屋の中には 一枚のキャンバスが イーゼルに立てかけられていた
静まりかえった部屋に 主の姿はなかった
少女は キャンバスに近づくと しばらく眺め
そして ぎゅっと抱きしめた
少女は 部屋を出て 真っ白な廊下を走っていった

少女は 扉を開けた
部屋の中には 大きなコンピュータがあった
モーターがうなりを上げ チカチカとせわしなく
いくつもの小さなライトが 点滅しはじめた
「Hello.」 モニターが明るくなり 文字と共に奥行きのない音声が発せられた
「Hello. Who are you?」 少女はコンピュータに話しかけた
「I don’t understand the question. Could you tell me more?」
「Where are you from? Where are you going?」
「I don’t understand the question. Could I have more information?」
少女は けらけらと声を立てて笑った
すると コンセントが抜け
真っ暗になったコンピュータは もう何も言わなくなった
少女は 部屋を出て 真っ白な廊下を走っていった

「わたしも もりにいくわ!」
少女は 廊下の先から溢れてくる光の中に 走っていった
少女の裸足の足が 土に触れ 一面の草原がおだやかに揺れていた
少女の目は その向こうに佇む 大きな大きな森を見た
燦々と降り注ぐ陽を浴びて 少女は 走って行った

陽光が照らすテーブルの上に 小さな白い羽が舞い降りた
はたと 物語を書く手を止め
大人になった少女は 部屋を出た

 

 

知れば知るほどに

知れば知るほど 人は 謙虚になっていく
偉ぶっている人は 自分の無知さえ 知らないがため
自分の非を認めない人は 自分の無知を 認めたくないがため
知ることを恐れる人は 自分が信じてきたものを 否定したくないがため
知ることを求める人は みんなが信じているものは違うのではないかと 感じるがため

知れば知るほど 絶望していき
知れば知るほど 可能性が見え
知れば知るほど 穏やかになっていく

内面が静かな人は ちゃんと向き合えた人
自分の無理を知る人は すでに 多くの知を手に入れている

知れば知るほど 無知を知る
知らないが故に この世界で遊ぶことができる

 

 

暗闇

暗闇に 鏡が立てられた

光を 灯せ!
大きくなった人々が 掲げた光
その姿を 見せよ!
そうして 暗闇は 夢を奪われた

光よ 失せろ!
小さき人々が 打ち砕いたその光
その姿は 見えやしない!
そうして 暗闇は 夢の続きをうたった

風よ 吹け!
僕らが呼んだ 太陽風
雨に打たれ 粉々になった 鏡の中
露わになった その姿
そうして 幾つもの空が もっと大きな夢をうたった

暗闇は 闇にあらず
闇は 光を掲げた者の内に巣くう
真の光は 光にあらず
光は 闇を生みし者の目を覆う

暗闇は 僕らの内より 世界を見る

今 僕らの前に 鏡が立てられる

 

 

私たちはまだ知らない

私たちは まだ 何も知らない
世界は まだ 何も決まっていない

最初の人は 誰だったのか
その人は 何を想ったのか

暗闇に灯る 黄金の砂粒
鯨がうたう 森の中
きみの瞳が 世界を紡ぐ

最初の人は 僕らだった
僕らが それを 望んだから

瞳に明かされる 空のうた
きみが 目を閉じ
世界が 目を覚ます

私たちは まだ 何も知らない
世界は まだ 何も決まっていない

否 わたしは 知っている
否 わたしは 知りたい

わたしと私たちときみと僕らの 透明な世界の物語