A Song of Twin Suns : #6

asongoftwinsunsわたしを呼ぶ 声が聞こえる
でも 確かに わたしを呼んでいるのだと わかっているのに
何を言っているのかが わからない

青い風が 吹く
声が 消えた
わたしは 目を開けた
目の前に 色を失くした世界が 微動だにせず 広がっていた

結局 何も変わらないのか・・・・・

わたしは 目を閉じて 歩き出した
乾燥した大地が 足の裏で 音を立てた

緑色の小さな光が 揺らいだ
緑色の小さな光の方へ向かうと
わたしは 森の中にいた
朝露に包まれ ひんやりとした森の中を 歩いていくと
朝日に照らされた朝露が 緑の上で 虹色に輝いていた

わたしを呼ぶ 声が聞こえる
でも やっぱり 確かに わたしを呼んでいるのだと わかっているのに
何を言っているのかが わからない

青い風が 吹く
声が 消えた
わたしは 目を開けた
目の前に 色を失くした世界が 何一つ変化せず 広がっていた

世界は もう死に絶えたのだろうか・・・・・

わたしは 目を閉じて 歩き出した

赤色の小さな光が 揺らいだ
赤色の小さな光の方へ向かうと
わたしは 海岸の砂浜の上にいた
波打ち際を歩いていると 真っ赤な太陽が 大空を赤く染めながら
水平線のその向こうへ 沈んでいった

わたしを呼ぶ 声が聞こえる
わたしは 星々が瞬く夜空を見上げた
でも やっぱり 確かに わたしを呼んでいるのだと わかっているのに
何を言っているのかが わからない

青い風が 吹く
声が 消えた
わたしは 目を開けた
そこには 相変わらず 色を失くした世界が 広がっていた

わたしは どうしたらいいのだろう・・・・・

わたしは 目を閉じて 歩き出した

金色の小さな光が 揺らいだ
金色の小さな光の方へ向かうと
わたしは 黄金のドラゴンの背に 乗っていた
雲を遥か下にして飛ぶドラゴンは 強い意志を持っているように
真っ直ぐ どこかに向かっていた

わたしを呼ぶ 声が聞こえる
わたしは ドラゴンに この声が聞こえるかと 訊ねた
すると ドラゴンは 世界に夜明けを告げるような声で 答えた
ああ 聞こえる あれは おまえの声だ
わたしの? でも わたしは ここにいるのよ
ああ だが 確かに あれは おまえの声だ

青い風が 吹く
声が 消えた
わたしは 目を開けた
色を失くした世界に 黄金のドラゴンが わたしの正面に 座っていた
ドラゴンは その深い青色の瞳で わたしをじっと見つめながら 語った
あっちとこっちに 壁は無い
壁を作っているのは おまえの意思
自ら生み出したものは 自ら壊さなければならない
さあ おまえの意思で 創り上げた世界を 壊せ
そうすれば おまえの目は 真の世界の色を 見るだろう
おまえは ひとりであり すべてである

わたしは 色を失くした世界に 仰向けになり 目を閉じた
乾いた風が まつ毛を揺らした

暗闇に わたしを呼ぶ 声が聞こえた
わたしは 全身を 声に預けた
すると 声が わたしの中に入ってきた
わたしは 声になった

声は 波紋のように 世界へ広がっていった
どこまでも どこまでも 外縁の無い透明な世界に 広がっていった

青い風が 吹く
わたしは ゆっくりと まぶたを開けた
青い空が 高く高く 広がり
白い雲が ゆったりと 流れていった
わたしは 手を伸ばし
太陽を 描いた

 

 

― writing: 「A Song of Twin Suns」 より抜粋