「惑星<雨>:10.クリークの助言」より「悪い人」

planet-rain「アナタのことが、もっと知りたいわ。」 ヴィーゼはそう言って、ゆっくりと身体を起こした。
ソラは、ヴィーゼの身体を支えながら、 「知る必要なんてないさ。」 と言った。
「ソラくん、キミはちっとも変っていないね。キミは、ワタシの何を、どう、知っているというのだね? ん?」 クリークはそう言うと、今度は両手をだらりと下げて、肩を落として聞こえるように大きく溜め息をついた。
「オマエは、悪だ。敵だ。偽りの神だ!」 ソラは、さらに鋭い視線をクリークに向けて、強い声でそう答えた。
「ほほう。では、悪とは何か? 敵とは何か? 偽りの神とは何なのだ? え?」 クリークは、ソラに詰め寄った。
「それは・・・。」
「それは?」
「・・・とにかく、オマエがいなければ、この世界は平和になるんだ!」 ソラは、しっかりとした答えを見つけることが出来ず、そんな自分への苛立ちとともに、投げつけるようにそう言った。
「おやおや、ワタシを殺すとでも言うのかい? 殺してどうなるというのだ。悪い人という者ならば、殺してもかまわないのかい? 平和を望む人間ならば、そのためには何をやってもかまわない、とでも言うのかい? え? 平和とは、何か。ただそうあるだけではないのか。ん? ・・・だが、キミにはそれさえ出来まい。いつも逃げ回ってばかりだからな。クックッ。」
「なんだとぉ!」 ソラは、拳を握りしめながら、自分の身体が熱くなり、震えているのを感じた。
「待って、ソラ。落ち着いて。この人は、私たちを怒らせようとしているのよ。・・・でも、同時にとても大事なことを言っているわ。鍵になることを。」 ヴィーゼは、ソラの手にそっと触れながら、クリークをじっと見て静かにそう言った。
「おや、おや。キミも見習いたまえ、ソラくん。攻撃的になるのは、弱い証拠だよ。ん?」
ソラは、ヴィーゼのやわらかい手と穏やかな鼓動を感じながら、必死に怒りを鎮めようとした。

 

― writing: 「惑星<雨>」より抜粋